ヤコブネットの活動

ヤコブネットの活動

第2号 ヤコブネットニュース   2003年2月発行

2012/03/16

2003年2月発行

国際ヤコブデーの集会を開催

11月12日(火)、東京弁護士会館国際ヤコブデーの集会が行われました。 この日は、最初に薬害ヤコブ病全国連絡協議会の運営委員による会議、そして、東京原告団を中心とした、第一次和解終了後初めての厚生労働省交渉が行われました(2面に関連記事)。この厚生労働省交渉終了後に、国際ヤコブデーの集会が始まりました。  この集会は、イギリスのターナー女史の呼びかけで始まりました。日本では第1回目となった今回は、当初、インターネットでつなぎ、世界同時に集会も企画されていたのですが、諸情でこの企画は中止になりました。そこで今回の集会では、記念講演として、八月にイギリスへ調査研究に行かれた片平洌彦先生(東洋大教授)、実際の医療現場でヤコブ病患者を診てられる小松崎八寿子先生(初石病院医師)の御二人に講演していただきました。  片平先生の講演では、サポートネットワークをいち早く取り組んだイギリスの体制を報告され、国としての支援の仕方日本と大きな違いがあると感じさせられました(ヤコブネット・ニュース第1号参照)。  また、小松崎先生には、「ヤコブ病との静かな戦い」という演目で、プリオン病の基礎知識、ヤコブ病患者との出会い、初石病院のこと、そして感染症対策について講演いただきました。その中で、現場のご苦労などを語られています。多くの患者家族が受け入れ病院がない悩みをかかえる中、初石病院・小松崎先生の姿勢はうれしいものです。  ヤコブ病が、一般の人に知られていない病気であることから、患者も家族もこの病気で苦しんでいる人が多くいます。今後は厚生労働省の協賛を取り付け、この日を国民的な日にすることで、多くの人にヤコブ病を知ってもらうことを通して、その苦しみを緩和できるようにしていきたいものです。

薬害ヤコブ病裁判の進行状況(2003年1月25日現在)

昨年3月25日に勝利和解した薬害ヤコブ病裁判ですが、現在追加提訴者の和解が進行しています。 多くの方が、昨年の勝利和解で終わり、新しく裁判を起こしてもすぐ終わっていると思われていたのではないでしょうか。現実は、左表を見ても分かるように、第一次和解以降は7件しか成立していません。裁判の進行が遅い原因として、被告B・ブラウン社がドイツの会社であるため、一つ一つ進めるにも国内の会社より時間がかかってしまっています。厚生労働省においては、裁判の進行には協力する姿勢を見せています(2・3面参照)。  追加提訴された方々は、早く終わってほしいと願っておられると思いますが、5年かかった第一次和解の結果がありますので、それほど時間がかからず解決していくと思いますが、第一次和解原告から見ても、こんなに時間がかかるのかと、不思議に思ってしまいます。このことが日本の裁判制度の問題と考えられ、裁判の進行が早くなるように法案も出されています。薬害ヤコブ病のように、原告のことも考え、早く解決できる制度になってほしいものです。  新しく追加提訴された方々には、長い時間と感じられると思います。被害者の主張が認められた和解ですので、焦らずがんばってください。そして、周囲の方々もご理解をお願いします。

和解後初の厚生労働省交渉

2002年11月12日、東京弁護士会館1006号室で、薬害ヤコブ病訴訟第一次和解後初の厚生労働省交渉が行われました。この交渉には、東京原告団を中心に多くの原告、弁護士、支援の方々が集まり、事前に厚生労働省側に提示していた質問に沿って、以下の交渉が行われました。 1 ヤコブ病患者の入院先の確保等の患者対策の問題と進展状況  [原告団]ヤコブ病患者の受け入れ可能病院がない県12、拠点病院がない県6、この状況の改善をどう進めるか。  [厚生労働省](既存の施策に関する一般的な回答に加え)北海道が道の施策として、難病受け入れ病院の指定を取り上げること、愛知県では入院コーディネーター  を設置したと聞いている。詳細は県の衛生局か保健所に問い合わせてもらいたい。不明な点は、厚生労働省疾病対策課が窓口になる。 2 未和解患者の和解協議の促進  [原告団]3月25日、確認書にて「早期救済」とあるが、その後十月末までに大津で4名・東京で1名の和解とは、どうなのか。確認書の趣旨を理解し、国としても和解を進めていただきたい。  [厚生労働省]本訴訟については、国として和解促進に努めたい。 3 薬害ヤコブ病患者の遺族に対するカルテの開示  [原告団]薬害ヤコブ病被害者の遺族の中で、国立循環器病センターに、カルテ開示を求めたところ、本人ではないという理由で開示を拒否された。和解手続きの中で、カルテ開示に国が積極的に対応すべきである。  [厚生労働省]カルテ開示については、平成11年7月の医療審議会中間報告において、3年間は医療機関の自主的努力を見守ることとされた。平成14年7月か  ら、「診療に関する情報提供等のあり方に関する検討会」を開催し、意見調整を行っているところ。議論の行方を見守ってほしい。  [原告団]一般論を聞いているのではない。硬膜移植後のヤコブ病患者へのカルテ開  示の問題であり、和解促進の観点から省として検討すべきであり、所管する国立の医療施設については特に開示に積極的対応をすべきである。  [厚生労働省]意見は持ち帰って検討し、国立病院部政策医療課にも伝える。 4 薬害ヤコブ病患者・家族への硬膜移植等の告知問題と取り組み状況  [原告団]全国調査研究班が報告した最初の43例について、佐藤猛先生より個別に告知するように」と指示があったが、その後どうなったのか。  [厚生労働省]ヤコブ病等委員会から医療機関へのアンケート(硬膜移植例について遺族への告知の有無)は、ヤコブネットのリーフレットも同封して9月初めに発送済み。現在回収中であるが、未回答が数施設あるのでプレッシャーをかけているところ。年内にはとりまとめをしたい。ヤコブ病等委員会で結果報告をする予定である。 5 サーベイランス委員会の開催と情報公開について  [原告団]前回は7月だったが、次回の委員会はいつ頃になる予定か。  [厚生労働省]次回のサーベイランス委員会、及び、それを受けてのヤコブ病等委員会開催日は未決定。年明けすぐと考えている。  [原告団]委員会の話し合いの内容公開についてはどうなっているか。  [厚生労働省]サーベイランス委員会は、国内の全プリオン病の発生状況把握、特に、新変異型ヤコブ病の迅速な把握を目的としている。プライバシー事項が多いので非公開とされている。解析結果はヤコブ病等委員会で公表する。  [原告団]前回からは、硬膜移植年月日のみの公表で、個々に識別できなくなったのは何故か。  [厚生労働省](患者情報については)サーベイランス委員会では症例番号で把握しており、把握症例と被害者との完全な一致は難しい。調査目的外利用がどうかと  いう問題もある。(ヤコブ病等)委員会でも、個別患者の識別を行なう場ではないことから公表を控えた方がいいとの意見もあり、前回から(従前のような情報は)公開しないこととされた。  [原告団]被害を知らされていない家族をどうするのか。  [厚生労働省]できる限りの努力をして、医療機関から家族に伝えてもらうように務める。今回のアンケート回答中、遺族に告知していないと答えた医療機関は1つであった。佐藤先生がアンケートを行なった当初の43例についてはわからない。 6 薬害教育の進展状況  [厚生労働省]前回の交渉での回答から大きな進展はないと聞いている。薬害教育のガイドラインを検討しているとのこと  である。  [厚生労働省]医師、歯科医師、看護士向け教育に関しては、平成15年の国家試験の出題基準改定時に、要請を踏まえて検討したい。 7 独立行政法人医薬品医療機器総合機構法の問題について   [原告団]法案の内容が確定した後、我々へ説明するというのでは遅すぎると考えるがどうか。  [厚生労働省]お話できる案が完成したのが9月半ばであり、ここで各患者団体に資料を送り説明した。薬被連とのタイミングに大きなずれはない。  [原告団]9月末に出来たばかりで、被害者の意向が入っていないのに、もう国会へ提案されている。国会審議の状況はどうなっているのか。  [厚生労働省]46設置予定の独立行政法人(厚労省所管)に関しては、11月11日から衆議院では特別委員会で審議  開始。参議院では各委員会で審議が始まる。  [原告団]今不安なのは、審議、承認、救済を同じ組織でやってしまおうというものだが、このまま通ったとき、すぐに法案の変更ができるのか。  [厚生労働省]企業所属の研究者が、新機構の審査官となることはあり得るが、採用時に人柄など含めて面接をするので、出身企業に有利な審査をするなどの不正  の心配はないと個人的には思っている。  [原告団]この独立行政法人において厚生労働省の立場はどうなるのか。    [厚生労働省]医薬品等の審査については、厚生労働大臣が承認権限を有し、安全対策でも最終的には大臣である。理事長の任命権も有する。従って、新機構については、厚労省が指導監督を行なう立場にある。承認した薬で薬害が起これば、厚生労働省が責任を取る。 8 難病対策と薬害ヤコブ病問題について  [原告団]難病から薬害ヤコブ病をはずす目的と、メリット、デメリットについてどう考えているのか。  [厚生労働省]特定疾患は45疾患あり、今後のありかたとして、原因があるのなら原因を作ったところが保障するという考え。しかし、現在のサービスより低下があってはいけない。今後議論をして変わるかもしれないが、薬害ヤコブ病のみを一般の難病対策から切り離すことは考えていない。  [原告団]まだまだ差別残存の現状。また、70歳の家族がヤコブ病患者の自宅介護を迫られているとの相談も来ている。厚労省の支援を。  [厚生労働省]新マニュアルでは差別に関しても加筆して医療機関に送付している。  機会あるたびに病院にはお願いをしたいと考えている。また、ホームヘルパーの講座で、難病患者への接し方というメニューもあり、差別が生じないような教育もしたい。  [原告団]臨床現場の問題。マニュアルが出ても現場に徹底されていない。厚労省から啓蒙の方策をとってほしい。  [厚生労働省]マニュアル改定時に(差別禁止の)通達を出した。それから1年も経たない段階でのその言葉は厳しく受けとめる。通知出す時期は来ると思うので徹底したい。  [原告団]医療機関から、発症不安を抱える者に対する検査費用についてどうしたらいいかという疑問出されている。  [厚生労働省]発症前診断方法未確立の段階で、省として施策をとることは難しい。  [原告団]今後、国際ヤコブデーに厚労省として協賛等の考えはあるか。  [厚生労働省]検討して返答したい。 9 最後に  [原告団]厚労省として把握している硬膜移植例については、事実をきちんと家族まで伝えるのが厚労省としての責任。1人のもれもなく伝わったことを省として  確認するべきである。  以上のように、1時間という限られた時間でしたが、原告団として、和解条項が進展するように要望の方が多い交渉でした。この被害者との交渉が、国民の健康を守ることや救済制度のあり方など、厚生行政を進めるための協議の場に早くなるように、厚生労働省の心構えや体質の改善をしてほしいものです。

第4回薬害フォーラム大阪で開催

11月16日(日)、大阪大学吹田コンベンションセンターで第4回の薬害フォーラムが開催されました。これまでは、東京を中心に開催されていたのですが、今回初めて関西地区で行われました。  この薬害フォーラムは、全国薬害被害者団体連絡協議会(以下、薬被連)主催で、多くの人に薬害の実態を知ってもらうために実施しています。今回の薬害フォーラムでは、第一部で薬害被害者の報告として、筋萎縮症、サリドマイド、スモン、HIV、陣痛促進剤の報告があり、特別報告として、勝利和解したヤコブ病、判決の近づいたMMRがありました。ヤコブ病からは、初めての関西での開催ということもあり、大津原告団団長谷三一さんが報告されました。  谷さんは、これまでの裁判の戦いを振りかえり、病魔に冒されなくなられた妻たか子さんを思い、切々と問いかけられました。その思いは、会場の人々の胸にしみじみとしみいるものでした。 第二部においては、HIV、サリドマイド、陣痛促進剤、MMR、スモンの各代表、片平洌彦先生(東洋大教授)がパネラーとして、薬害が日本で多発する原因を解明しながら、夏の厚生労働省・文部科学省との交渉の内容をふまえ、薬害がなぜ起こるのか、またどうすればなくせるのか、それぞれの立場から意見を出し合いました。今回は、に独立行政法人医薬品医療機器総合機構法の問題(4面参照)もあり、緊急アピールなど行っています。  初めての関西地区の開催ということもあり、参加者は例年に比べ少なかったという印象ですが、薬害という人間の健康・生命を奪う問題を知ってもらうことができたと思います。独立法人問題もあるように、国などに任せっぱなしでは、知らないうちに自分の健康・生命を奪われてしまうことも多いのです。そうならないためにも、様々な情報を自分で集め、判断していくことの重要さを知らしめたフォーラムではなかったでしょうか。

全国薬害被害者団体連絡協議会

加盟団体は、ヤコブ病、HIV、スモン、サリドマイド、筋萎縮症、MMR、陣痛促進剤、など被害者団体が加盟しています。活動としては、薬害フォーラ ムと8月24日薬害根絶デーにちなんで、「薬害根絶の日」の前で厚生労働省に要望書の提出(2002年は副大臣が出席)、さらに、薬害根絶のために厚生労働省交渉、文部科学省交渉(薬害根絶 のための教育の充実を求めて)を行っています。

独立行政法人医薬品医療機器総合機構法が成立

先の臨時国会で、独立法人医薬品医療機器総合機構法が成立しました。この法律は、これまで厚生労働省が行っていた業務を行政法人が担えるようにした薬事行政の改革をはかったものです。この法律で成立する新法人の特徴は、次の通りです。 【業務内容】  ①承認審査   ②副作用情報などの収集・分析、提供の安  全対策   ③研究開発振興   ④副作用など被害救済  【運営】   非公務員型法人。運営は、審査手数料の引き上げなどで賄うが、安全対策業務についても医薬品・医療機器製造業者等から安全対策等拠出金を徴収する方針。2004年4月から稼働させる予定。  この法律は、医薬品の審査、承認、副作用の救済を同じ組織でやり、さらには、職員は民間から募集するため、製薬会社からの派遣社員がこの仕事をやっていくようになっています。「狐に鶏の番をさせる」ようなもので、我々薬害被害者の願いである薬害の根絶にはほど遠いものになっています。さらには、薬害ヤコブ病訴訟の和解項目である生物由来製品に関する規定を、この機構法に盛り込んだことで、目新しく感じさせていました。  この機構法の法案が、薬害被害者に提示されたのが9月末でした。この法案を知った全国薬害被害者団体協議会(以下、薬被連)では、学習会や抗議を10月中旬から始め、徹底した反対行動をとりました。薬被連では薬害オンブズパーソンと協力しながら、厚生労働省交渉、国会審議が始まったら国会議員への要請活動、厚生労働省前での反対集会、薬被連としての抗議文の提出など取り組めることはすべてやっていきました。その結果、参議院厚生労働委員会では、参考人質疑が実現しましたが、12月13日参議院で可決され、法律として成立してしまいました。  しかし、我々の反対の成果は、坂口厚労大臣の談話として、①将来的には研究開発振興業務を将来的に新法人から分離することを検討する方針 ②企業と行政の癒着を防ぐため職員の採用にあたり製薬企業からの採用を制限する の2点を引き出すことができました。  また、12月26日の薬被連と坂口厚労大臣との意見交換では、①被害者の代表を新法人内の審議機関に参画させるよう申し送りする ②新法人の業務のうち、医薬品の研究振興業務は、新法人の設立とそう遠くない時期に別の法人に分離する ③来春、再び被害者と会い、新法人の業務内容について意見交換する ④全体の監視は、現行の薬食審の充実と課横断の健康危機管理調整会議で対応する などと明言されています。  この新法人問題でも分かることは、薬害を根絶するには、まだまだ薬害被害者が監視し活動していく必要を感じました。

サポートネットに寄せられた相談内容

これまで寄せられた相談内容として、次のものが多くありました(回答内容も書いておきます)。 ○ 治療法、治験について   キニーネ・キナクリンの説明  ○ 病院での付き添いについて   病院側の対応にもよるが、二十四時間の付き添いは不要。  ○ ヒト乾燥硬膜の脳外科以外(斜視・緑内障)の手術での使用について    斜視・緑内障の手術では、ほぼ使用されない。また、後縦靭帯骨化症の手術にて硬膜移植をし、ヤコブ病を発症した例が一件あるが、脳外科として手術をする場合もある。その他、脳外科手術以外での  硬膜使用による発症は確認されていない。  ヤコブ病という百万人に一人の発症率の病気だけに、発症したときの不安は家族にとってつらいものがあります。この不安を少しでも取り除けるように、サポートネットの活動があります。国の制度や病院の受け入れ態勢など、まだまだ問題点も多く残っています。しかし、我々サポートネットでは、患者家族の方の不安を取り除くと同時に、制度面でも変えていけるように活動していきます。 【電話相談員の声】  お電話やメール、ホームページへの書き込みでご家族がヤコブ病にかかられた方々の相談が増えてきました。一件うかがうたびに、その悲しみの深さ、不安の大きさに私達も胸が締めつけられるようです。  私達にできることは、お話をうかがい知っている限りの情報を提供することしかありません。一日も早く、治療法をお伝えできる日が来ることを願い今後とも微力ながら電話相談員として頑張らせていただきます。

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