ヤコブネットについて

ヤコブネットの設立について

ヤコブ病サポートネットワーク(略称:ヤコブネット)の設立について

2002年6月

1. 設立の趣旨、目的

私たちは、医療の場で「ヒト乾燥硬膜」(以下硬膜)を用いたことによって、難病のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD、以下「ヤコブ病」と言います)に感染させられ、甚大な被害を受けた被害者と、被害者が起こした訴訟を担当した弁護士、そして被害者を支援している研究者や医療従事者、そして労働者、市民です。ヤコブ病は、潜伏期が長いのですが、ひとたび発症すると急速に運動機能や知的機能などが障害を受け、短時日のうちに死亡する恐ろしい病気です。この病気の無理解に伴う社会の偏見、差別もあいまって、患者本人のみならず、家族や親しい友人、知人は、筆舌に尽くせない苦しみを受けてきました。その苦しみは、訴訟が和解で解決しても、容易には癒されるものではありません。

ヤコブ病については、これまでに専門的な相談窓口がなく、診療経験のある医療機関も少ないことから、ヤコブ病患者、家族は、医療、看護、介護に多くの困難な問題を経験してきました。薬害ヤコブ病の場合、硬膜移植を受けて将来の発症の不安におびえる人もいます。

こうした経験をふまえ、私たちは、ヤコブ病サポートネットワーク(略称「ヤコブネット」)を作って、薬害ヤコブ病患者、家族の医療、福祉問題の解決、生活支援、遺族の精神的サポート、硬膜移植経験者からの相談への対応等の活動を行うとともに、このような悲惨な薬害を繰り返さないため、なぜこのような被害が起きたのかを究明し、その上に立って、薬害の再発防止、根絶のために必要な事業を行うこととしました。

私たちの活動は、当面、薬害ヤコブ病の被害者を対象と考えていますが、いわゆる孤発例や、その他の原因によるヤコブ病の場合も、ご相談があれば、可能な限り対応していきたいと考えています。そして、他の薬害被害者団体や、難病団体とも連携して、薬害、難病問題の解明、解決のため、力を尽くす所存です。国民の皆さまのご理解、ご支援をここにお願いします。

2. 事業内容

(1) 生活支援相談事業:

医療・看護・介護相談、福祉・生活相談、裁判に関する相談、家族・遺族の精神的サポート等。

ケースワーク:電話相談、メール相談、面談等。相談員の育成。

グループワーク:集会、交流会、研修会、研究会等。

コミュニティワーク:各種社会資源・福祉制度の活用・情報提供と改善への働きかけ等。

(2) 調査研究事業:

ヤコブ病に関する国内外の情報収集と提供、潜在被害者の発見、被害者のニーズと対応のあり方の解明、行政施策の充実・改善、薬害発生原因の解明と生物由来製品による感染被害の防止など薬害根絶に向けての調査研究・提言等。

文献の検索と提供、ライオデュラ使用実態調査、医療機関調査、被害者の実態・ニーズ調査、薬害オンブズパースン会議や他の薬害被害者・難病団体(日本アルツハイマー協会を含む)との協力・共同による調査研究等。

(3) 医療対策事業:

医療機関の確保・紹介、公的制度の即時利用と問題点の改善、国の研究班や委員会等との連携等。

ケースワークによる医療機関紹介、英国の専門病院見学と日本での設立の可能性検討、難病対策の利用と改善、遅発性ウイルス感染調査研究班・同サーベイランス委員会との情報交換・連携等。

(4) 教育・啓発・福祉事業:

国民への教育・啓発、特に研修等による医療機関・葬儀業者・医療用具業者の偏見除去、「薬害教育」の推進等。

ニュースや出版物の発行。研修・研究会等の実施。薬害・難病関係集会等への参加。「薬害教育」の実態調査とそれに基づく推進活動、教材作り。文部科学省・教育委員会・教科書会社への要請。

3. ヤコブネットのシステム

このネットの目的に賛同する人は所定の手続きにより、会員または賛助会員となることができます。会員は事業を協力して進め、賛助会員は事業に賛同、協力します。

上記の事業を行うため、このネットは運営委員会を置き、委員の中から代表・副代表・事務局長・事務局次長を選出します。運営委員会はメーリングリスト等を活用して意志統一をはかり、相談等に早期に対応するようにします。役員の任期は、当面1年とし、再任を妨げないこととします。総会は少なくとも年1回開催します。