ヤコブネットの活動

ヤコブネットの活動

第3号 ヤコブネットニュース   2003年9月発行

2012/03/16

2003年9月発行

教育・福祉・啓発事業部編集

とどけ!我らの願い 「薬害根絶の碑」完成

2003年3月23日(日)、滋賀県大津市に建立された「薬害根絶の碑」の除幕式が行われました。この碑は、二度とこのような悲惨な薬害を繰り返さない願いを込め、薬害ヤコブ病裁判の和解条項の一つとして作られたものです。

大津市遊びの森SL公園にできた「薬害根絶の碑」(題字は、現厚生労働大臣坂口力氏によるもの)

この「薬害根絶の碑」を作るにあたって、薬害ヤコブ病全国連絡協議大津市遊びの森SL公園にできた「薬害根絶の碑」(題字は、現厚生労働大臣坂口力氏によるもの)会の役員が何度も話し合い、碑建立委員が直接的な交渉を行い、完成にこぎつけています。この碑の建立にあたっては、用地を快く提供してくださった大津市や滋賀県、題字を書いていただいた坂口力厚生労働大臣には、関係者も感謝の念にたえません。

この「薬害根絶の碑」建立式典には、薬害ヤコブ病裁判原告、弁護団、支える会など多くの方々が出席され、100人を超える人数になりました。この集まった人数の多さに、あらためて薬害ヤコブ病の被害の大きさを知らされるものでした。薬害ヤコブ病原告等の関係者にとっては、ひとしおの思いのある碑でもあります。

これで日本には、厚生労働省内にある「誓いの碑」と共に、薬害をなくすと決意した碑が二つになりました。まだ、MMRやC型肝炎の問題など、薬害が起こっています。この碑に決意されたように、薬害が二度と起こらない国に早くなってほしいものです。

衆議院議員中川昭一先生(薬害ヤコブ病問題を考える議員の会代表)からのメッセージ

薬害ヤコブ病全国患者家族の会

薬害ヤコブ病被害者弁護団全国連絡会議 の皆様

薬害ヤコブ病「祈念碑」完成のお祝いにかえて

薬害ヤコブ病「祈念碑」の完成誠におめでとうございます。

クロイツフェルト・ヤコブ病訴訟の原告の皆様が、幾多の困難を乗り越えて、厚生労働大臣と和解されてから早くも一年が過ぎたことを思うと感慨深いものがあります。

以前、私も患者の方をお見舞いさせていただいたり、お話を聞かせていただく機会を与えていただきましたが、ご家族の怒りや悲しみはいかばかりであったのだろうかと嘆かわしく思うと同時に、このような悲劇は二度と繰り返してはならないと強く感じたものです。

この祈念碑は、そうしたヤコブの悲惨さや原告の皆様の思いを、現在から将来にわたって広く伝えていく大変重要なものです。そして、全ての人が、石碑をまえにして、このような悲劇を二度と繰り返すまいと固く心に刻み、安全な医療が提供されていくようになることを切に願っています。

平成15年3月23日

薬害ヤコブ病問題を考える議員の会

会長 衆議院議員 中川昭一

ヤコブ病サポートネットワーク第二回総会六月八日開催

平成15年6月8日(日)、名古屋市邦和セミナープラザで第二回総会が行われました。この日は猛暑と呼べる日でしたが、暑い中で活発な論議がなされていきました。

まず、記念講演として、日本福祉大学教授牧野忠康先生からニュースから見た薬害という演目で講演いただきました。毎日簡単に見ているニュースが、日常の中で、これほど健康阻害につながる問題があるのか痛感させられました。何かことが起これば気づくことも多いのですが、その以前に、原因が始まっていることがわかり、小さなことにも注意深く見ていく必要があることがわかりました。

次に、東洋大学教授片平洌彦先生から、スティーブンス・ジョンソン症候群の問題について報告がありました。スティーブンス・ジョンソン症候群は、抗生物質や痛み止めなど様々な薬で起こるもので、特定の薬品が対象となるものではありません。現在、多くの薬剤が出回っていますが、人によって特定の抗生物質によりアレルギーになり、粘膜に炎症を起こし、最悪の場合失明につながる危険性の高い疾患です。現在の薬の流通量を考えれば、誰が被害者になるかわからないものです。薬害だけでなく、薬全体にいつでも注意しておく必要を感じました。

最後に、薬害ヤコブ病の家族の方から看病の問題やキナクリンの使用状況など、今思われていることの報告がされています。ヤコブ病自体が、まだわからない点も多く、治療法もない病気ですが、キナクリンの使用は、治療法への進展につながるものとして期待されているものです。患者が少なく、研究も進みにくいでしょうが、早い治療法の開発を、薬害ヤコブ病被害者は熱望しています。

 講演終了後、議事に入り、昨年度の事業報告、決算、今年度の事業計画、予算の審議が行われました。今年度から、薬害ヤコブ病訴訟の和解案に基づき、厚生労働省から予算処置が行われるため、活発な論議がされていきました。組織として立ち上がったばかりで、まだ多くの人の期待に応えることができるまでには至っていません。一つ一つやれることを確実に行い、ヤコブ病で苦しんでいる患者・家族を救えるように活動するための論議でした。

【平成14年度事業報告】

【平成14年度事業報告】

1 生活支援相談事業
  1. 相談件数155件
    電話149件、メール5件、手紙1件
    主な相談内容
    発症不安、ヤコブ病の疑い
    ヤコブ病発症(弧発例も含む)
    病院について(入転院、差額ベッド代、オムツ代等)
    硬膜移植者へのフォローアップについて
    硬膜の脳外科以外での使用について
  2. 平成14年9月、平成15年1月・3月に研修交流会にて、相談の報告等を行う。
  3. 平成14年6月30日ホームページを開設し、月平均2~3回更新。
  4. 問い合わせの多い相談をもとにQ&Aを作成し、ホームページに掲載。
2 調査研究事業

平成14年8月13~19日、片平洌彦氏(東洋大社会学部 教授)らにより、英国CJDサポートネットワーク、英国ロンドン聖メアリー大学病院のプリオン・クリニック、ロンドン大学病院の神経学研究所と小児保健研究所、エジンバラ大学病院の国立CJD調査監視ユニットを訪問し、研究者・保健医療福祉従事者からの聞き取りと資料収集等が行われました。

3 医療対策事業
  1. 厚生労働省交渉
  2. 全国保健所691カ所、CJD専門医49カ所、拠点病院・受入可能病院等105カ所へリーフレット・会報・Q&Aを配布。
  3. 医療機関からの情報収集。
4 教育・啓発・福祉事業
  1. リーフレットを作成し、全国保健所691カ所、拠点病院・協力105カ所へ配布。
  2. 人権問題に関するシンポジウムで講演。
  3. 会報の作成・発行(2回)

【平成14年度決算報告】

1 収入の部
  1. 薬害ヤコブ病全国連絡協議会からの借り入れ 10,498,950円
  2. 会費 330,370円
  3. 寄付 679,077円
  4. 利息 142円
  5. その他 10円

計 11,508,549円

2 支出の部
  1. 薬害ヤコブ病全国連絡協議会への返金   2,498,950円
  2. 相談員費用 1,827,269円
  3. 講師料  600,000円
  4. 旅費宿泊費 1,421,685円
  5. 通信費  818,834円
  6. 印刷費  841,156円
  7. 消耗品費 436,293円
  8. 雑費 15,165円

計  8,459,352円

3 残 高

収入11,508,549円-支出8,459,352円 =残高3,049,197円【平成14年度事業報告】

【平成15年度事業計画】

1 生活支援相談事業
  1. 岐阜県中津川市に本部を置き、常駐の専任生活相談員を配置し、電話相談を中心にして相談事業に取り組みます。
  2. 全国に3カ所(札幌・東京・大津)の支部を置き、生活相談員を配置して、電話相談等に取り組みます。
  3. 本部・支部の相談にあたっては、専門家相談員の協力を得るものとします。
  4. このような相談事業を行っていることを知らせるために、リーフレット、会報を作成・配布するほか、開設しているホームページを更新していきます。
  5. 生活相談員の相談活動を円滑に行うために、『相談マニュアル』を作成するとともに、これを一般にも配布することとします。
2 研修事業

生活支援相談に関わった相談員・専門相談員などが、年4回相談事例を持ち寄るなどして、研修・交流を行い、相談活動の充実・強化を図ります。

3 地方相談事業

電話による生活支援相談活動で対応しきれない相談につき、生活相談員が共同して、患者・家族のいる北海道・関東・中部・九州の各地域において、年6回地方相談会を開催し、生活支援相談活動の充実・強化を図ります。

4 その他の支援事業

上記のほか、ヤコブ病サポートネットワーク事業の充実・強化と、ヤコブ病患者・家族の支援に必要と認められる下記の事業に取り組むものとします。

  1. 調査研究事業
  2. 医療対策事業
  3. 教育・啓発・福祉事業

【平成15年度予算案】

1 収入の部1 収入の部
  1. 厚生労働省より 16,165,000円
  2. 年会費・寄付  300,000円
  3. 前年度繰越金 3,049,197円

計 19,514,197円

2 支出の部
  1. 生活支援事業  12,478,000円
  2. 研修事業 1,151,000円
  3. 地方相談会事業  2,536,000円
  4. その他の事業 3,000,000円

計  19,165,000円

3 予備費 349,197円

【平成15年度活動予定】

 6月 8日(日) 地方相談会

[名古屋]  相談員・専門委員研修会  総会

 7月26日(土) 地方相談会
   27日(日) 相談員・専門委員研修会   [札幌]
 9月28日(日) 地方相談会  [大津]
11月12日(水) 国際ヤコブデー

[東京]  地方相談会  相談員・専門委員研修会

 1月25日(日) 地方相談会  [福岡]
 3月下旬     地方相談会  [大津]  相談員・専門委員研修会

「独立行政法人医薬品医療機器総合機構法案」問題について

昨年(平成14年)12月法案が可決され、来年(平成16年)から稼働予定の「独立行政法人医薬品医療機器総合機構」(以下、独立行政法人)について、その後の動きをお知らせします。

この独立行政法人については、ヤコブネットニュース2号でもお知らせした通り、問題の多いものでした。全国薬害被害者団体連絡協議会(以下、薬被連)・薬害オンブズパーソンを中心に、集中的な反対運動をしてきましたが、法案が可決され、稼働されるようになりました。そこで、薬被連では、独立行政法人が薬害を根絶できる組織になれるように、厚生労働省や大臣との交渉を続けています。その中で、3月19日に提出した要請書の骨子は、以下の通りです。

この要望書に沿いながら、厚生労働省と数回にわたり、独立行政法人のあり方や運営の仕方について論議を深めています。

現在、医薬品がコンビニで販売できるようにするための動きがあります。医薬品の副作用や欠陥医療用具のため、薬害が発生する中、安易に医薬品がコンビニで買えるようにすることは、薬害の発生を抑制することにつながりません。現在でも、薬屋のチェーン店化で、簡単に医薬品が買える状況にあります。このような中、国民を薬害から守るためにはこの独立行政法人の役割は大きなものと言えます。

薬害ヤコブ病以後、MMR・C型肝炎・肺ガン治療薬イレッサの問題など薬害が起こっています。薬害被害者は、病気治療のための薬が安心して使えるように、この独立行政法人をしっかりした組織になり、薬害が再発しないことを願い活動しています。

薬被連が厚生労働省に提出した独立行政法人に関する要望書

  1. 審議議機関について
    • 審議機関は、単なる諮問機関とすべきでなく、広く総合機構の運営、業務に関する  審議を行い、法律上根拠を明示すること。
    • 審議機関は、薬害被害者複数および薬害被害者の推薦する法律家、医薬品評価の専門家を含んだ構成であること。
    • 審議内容は法人運営に関する事項と個別業務に関する事項全般であること。
    • 開催は年間4 回以上とし、それぞれの審議機関は、委員の要請により委員長が適宜臨時に招集しなければならない。
    • 審議会および部会は原則公開とし、会議の非公開および資料の非公開の必要がある場合は、その理由を公開し、審議会の承諾を得る事とする。なお、議事録については、議事の全てについて作成し、全文を速やかに公開するべきである。
    • 委員長は委員の互選で選任するべきである。
  2. 審査・管理部門について
    • 審査・管理部門には、私たちが推薦する医薬品評価の専門家をより多く採用するべきである。
    • 製薬企業出身者は採用するべきではない。
  3. 安全監視部門について
    • 安全監視部門については、私たちが推薦する、医薬品評価の専門家等をより多く採用するべきである。製薬企業出身者は採用すべきではない。
    • 先端技術の専門家や感染症の専門家などを含む質の高い人材を多く擁した査察チームを充実させるべきである。
    • 再審査、再評価、審査資料適合性調査業務は製薬企業の資金を遮断して、充実をはかるべきである。その際、データの作成に関与した医師の中立性や専門性も審査の対象とするべきである。
  4. 救済部門について
    • 常に薬害被害者を含む第三者によって評価を受ける体制とせよ。
    • 副作用情報を安全対策部門に報告する体制を構築するべきである。
    • 副作用被害救済業務において薬害被害者の関与を認めよ。
  5. 研究開発振興部門について
    • 研究開発振興部門の分離は総合機構成立と同時に行うべきである。
    • 研究開発振興を行う分野については、常に患者の利益を第一とし、利益追求するあまり、患者の弱みにつけ込むようなことにならないよう、十分監視すること。
  6. 役員について
    • 薬害被害者を役員として採用せよ。

第5回薬害フォーラムのお知らせ

今年で第5回を迎えた薬害フォーラムが先の日程で行われます。今年は、薬害ヤコブ病裁判の「薬害根絶の碑」建立や、MMRの第一審判決、肺ガン治療薬イレッサの問題、C型肝炎の訴訟など、薬害にまつわることが多数ニュースで登場しています。日是非参加してみてください。

「心の叫び」出版

この度、かもがわ出版から「心の叫び 薬害ヤコブ病裁判解決へのみちのり」が出版されました。この本は、五年にも及ぶ裁判の足跡をまとめたもので、この裁判の原告も手記を多数寄せています。ヤコブ病の悲惨さは、見た目以上に厳しく、患者家族の思いを知ってもらうことが、この病気への偏見や差別をなくすことにつながるものです。また、薬害の起きる構図を知ることで、薬害の予防にもつながります。是非ご一読ください。

定価二,二〇〇円(税別)